5)「治験」に参加する際の注意点

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●「治験」に参加するうえで、よく質問に挙がっている項目について、纏めました。  

① 「治験」に参加するメリット、デメリットは、どういう点か?

(ⅰ)健常人の場合

メリット

・健康診断に匹敵する臨床検査項目を、製薬企業の負担で受けられます。
・入院期間中は、栄養管理された食事が提供されます。
・「治験」に参加することで、その薬の承認が取得されれば、社会貢献を行う事が出来ます。
・「治験」に参加すると拘束期間(入院等)に応じて、定まった額の協力金が支払われます。
・ 協力金は拘束時間によるので、単回投与より反複投与で、より多くの額が支払われます。

デメリット

・試験の検査項目が多く、時間的・生活上の拘束が生じます。
・治験薬を予定通りに服用し、入院ないしは定期的に病院にいく必要があります。
・思いがけない症状(副作用)が出る場合があります。

(ⅱ)患者さんの場合

メリット

・国内では承認されていない、最新の治療を受けることが出来ます。
・一般の診察よりも詳しい検査が受けられます。
・「治験」に参加することで、その薬の承認が得られれば、社会貢献を行う事が出来ます。
・「治験」中の検査費用、一部の薬剤の費用は製薬会社が支払うので、負担が少なくなります。
・「治験」に参加すると来院回数が増えるので、通院に対する負担軽減費が支払われます。

デメリット

・一般の診察に比べ、検査項目が多く、時間的な拘束が生じます。
・治験薬を予定通りに服用し、定期的に病院にいく必要があります。
・思いがけない症状(副作用)が出る場合があります。
・「治験」によっては、新薬候補品ではなく、薬理作用のないプラセボを服用する事があります。

② 危険性(副作用)の心配はどの位あるか?

● これ迄、説明した通り、「治験」の実施は細心の注意を払って実施されますが、新薬候補品は、ヒトに取って異物である以上、危険性(副作用)が発現することは無いと、100%断言することは出来ません。

● 但し、「治験」の場合には、副作用が起きる徴候を早期に捉え、症状が発現した場合には、直ちに、その方の服薬を中止して、副作用の治療を集中的に行える体制を整えているので、症状の発現を最小限に抑えることが可能になります。

● もちろん、治療に掛かる費用は製薬会社が負担します。

③ 個人のプライバシーは守られるか?

● 被検者あるいは患者さんのプライバシーや人権は、国の法律によって守られていますので、個人の情報が外部に漏れることはありません。

④ 「治験」には、誰でも参加できるのか?

● 健常人を対象とした「治験」の場合、年齢の制限、体重の制限、臨床検査値の異常の有無、基礎疾患、特殊な病状(アレルギー体質)、あるいは他の新薬候補品等の臨床試験に参加して、どの位経過しているか等を考慮して、「治験」の参加への適格性が判断されます。

● 患者さんを対象とした「治験」の場合、治験計画書で選択基準、除外基準が規定されていますので、年齢、性別から対象とする疾患の重症度、合併症、併用薬剤、妊娠の可能性、特殊な病状(アレルギー体質)等を総合的に判断して、「治験」への参加の適格性が判断されます。

● 従って、「治験」の規定に従って、誰でも参加できるわけではありません。

⑤ 「治験」への参加を断ったり、途中でやめることは出来るのか?

●「治験」に参加する場合には、医師から同意説明文書を用いた説明を必ず受ける事になっていますが、その同意説明文書の中にも、「治験」への参加は被検者あるいは患者さんの自由意思で決めることが事が出来ます。

● 治療を受けている主治医の先生から「治験」への参加を勧められた場合においても、参加を拒否することで、その後の治療に不利益を被る事はありません。

● また、「治験」への参加に同意し、投薬を開始したとしても、いつでも、理由なしに途中で治験を中止しても良いことになっています。

● ただ、その場合、中止時のデータは貴重な情報になりますので、同意説明文書には、中止した場合には中止時の有効性、安全性に関する検査項目は受けて頂くことが記載されていますので、ご留意願います。

⑥ インフォームド・コンセント(IC)とは何ですか?

● 健常人の試験でも、患者さんの試験でも、「治験」の内容について、医師から同意説明文書を用いて、十分に説明を受け、同意するに当り、ある一定の時間の猶予が与えられ、被検者ないしは患者さんが「治験」の内容をよく理解し納得した上で、本人自身の自由な意思で、文書で合意し、「治験」に参加することです。

● 尚、同意説明文書には、冒頭の厚生労働省の「治験」とはの中では、以下のようなことが記載されています。

同意説明文書に記載されている事

-治験の目的、治験薬の使用方法、検査内容、参加する期間
-期待される効果と予想される副作用
-治験への参加はいつでもやめることができ、不参加の場合でも不利益をうけないこと
-副作用が起きて被害を受けた場合、補償を請求できること
-カルテ、検査結果等の記録を、製薬会社、厚生労働省、治験審査委員会の担当者がみること
-担当する医師の氏名、連絡先
-治験に関する質問、相談のための問い合わせ先
-その他、当該治験の適否を判断する治験審査委員会に係わる事等

⑦「治験」で効果が見られた場合、治験終了後においても、継続して治験薬で治療を受けることは出来るか(患者さんを対象とした治験の場合)?

● 患者さんを対象とした「治験」においても、通常は「治験」が終了すると、その治験薬の継続使用はできないことになっています。

● しかしながら、国内開発の最終段階である治験(通常、効能・効果及び用法・用量が一連の開発を通じて設定された後に実施される有効性及び安全性の検証を目的とした治験(「主たる治験」という)の実施後あるいは実施中の「治験」の治験薬の場合で、人道的見地から既存の治療において十分に有効な治療方法がなく、すぐに生命を脅かす疾病 又は日々の生活に重大な影響がある重篤な疾患の患者に対しては、規定された条件を満たせば、拡大治験に引き続き参加できる場合があるとされています。

● 詳細に関しては、「治験」の担当医師と相談することを、お勧めします。

人道的見地から実施される治験について
https://www.pmda.go.jp/review-services/trials/0016.html

● 尚、健常人の「治験」では、効果を得ることを目的としていないので、一定期間の定められた観察期間が終了した段階で、治験も終了となります。

【今回の項目の纏め】

「治験」に参加する際に、よく質問に挙がっている項目について纏めました。

①「治験」に参加するメリット、デメリットは、どういう点か?

② 危険性(副作用)の心配は、どの位あるか?

③ 個人のプライバシーは守られるか?

④「治験」には、誰でも参加できるのか?

⑤「治験」への参加を断ったり、途中でやめることは出来るのか?

⑥ インフォームド・コンセント(IC)とは何か?

⑦「治験」で効果が見られた場合、治験終了後においても、継続して治験薬で治療を受けることは出来るか(患者さんを対象とした治験の場合)?