4)患者さんを対象とした「治験」の全般的な実施フローの事例

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● 次に、患者さんを対象とした個々の「治験」がどのような手順で実施されているかについて、その全般的なフローを以下に示します。

① 初めに治験実施計画書、治験薬概要書、試験成績調査表、患者さんの同意書及び同意説明文書等の治験に関する資料を作成します。

② 次に、「治験」の実施を依頼する病院の選出、代表責任医師の選出など「治験」を実施するための体制づくりを行います。

③ 体制が出来上がったら、PMDAへ実施する「治験」の治験届を提出して問題がなければ、「治験」を実施する全国の病院(30~100施設位)の院長、責任医師、分担医師、薬剤部、検査部、看護師、事務局、CRC等に対して「治験」の依頼・説明を行います。

④ 各病院内で「治験」を行う体制を整備した上で、「治験」の説明会を全国規模ないしは病院毎に実施します。また、同時に使用する治験薬を各病院に配布します。

⑤ 次に「治験」に参加する患者さんの募集を行って、同意が得られた方を対象に新薬候補品等を投与して、「治験」を実施します。

⑥ 6か月から1年位の投与期間の間に得られた、新薬候補品の効果(例えば、高血圧治療剤ならば、血圧値の低下の程度)、安全性(副作用の発現の有無)、臨床検査値等のデータ(異常値の発現の有無)を試験成績調査表で全国の病院から収集します。

⑦ 集められたデータは、製薬会社等の統計解析分門で集計、解析し、治験成績の結果が出てきます。

⑧ 得られた結果を基に報告書(治験総括報告書といいます)を作成して、1つの試験が完了することになります。

SMOとは?

SMO(治験施設支援機関、Site Management Organizationの略)とは治験を実施する病院やクリニックと契約し、治験の仕事を支援する企業のことを言います。治験に関わる医師や看護師、事務局や製薬会社の仕事を支援することにより、治験の品質・スピード向上の支援をしています。業務を担当する人はCRC(Clinical Research Coordinator)と呼ばれています(比較的大きな病院では、病院で雇用されたCRCがいる場合があります)。

CROとは?

CRO(医薬品開発受託機関、Contract Research Organizationの略)は製薬会社から委託を受け、主に医薬品開発における臨床試験や製造販売後調査及び安全性情報管理を行う企業です。業務を担当するする人はCRA(Clinical Research Associate)と呼ばれています(製薬会社内でモニターの仕事をする方もCRAと呼ばれてます)。

【今回のお話の纏め】

① 健常人を対象とした臨床第Ⅰ相試験は、1 施設で実施することが出来ます。

② しかし、患者さんを対象とした臨床第Ⅱ相試験、臨床第Ⅲ相試験 では、30~100位の病院が共同して実施する必要があります。

③ そのため、患者さんを対象とした「治験」では、治験を実施するための体制(治験参加施設、治験関係者の選出、参加依頼)を構築する必要があります。

④ 多数の参加施設、治験関係者によって、同一の治験実施計画書に基づいて治験を正確に実施し、信頼性のあるものにするためには、参加施設、治験関係者全員が、治験計画書の内容を同じように理解し、同じように実施する必要があります。

⑤ そのため、参加施設、治験関係者の全員が同じ場所に集合して、「治験」の内容について細かく説明を受け、理解するための研究会の開催、並びに各病院内での治験説明会を実施して、同じ内容の「治験」が行われるようにする必要があります。

⑥また、得られた治験成績についても、同一レベルの信頼性のもとに収集され、一定の基準に従って、治験成績が纏められる必要があります。